湯の駅おおゆ

秋田県鹿角市に新設の道の駅として2018年4月にオープンした「湯の駅おおゆ」。鹿角市役所主導のもと、設計に隈研吾さんを迎え建設工事は順調に進んでいたのだが、オープン5ヶ月前に議決済みの指定管理者が辞退するという事態が発生。永楽商店として県内の事業者とジョイントで再公募に応募し、指定管理者として参画することとなった。事業計画を策定し、年明け1月に内定、運営会社「恋する鹿角カンパニー」も設立し、フル稼働で予定通り4月のオープンにこぎつけた。
事業コンセプトは「縁が輪になる、大湯のえんがわ」。街の縁側空間として鹿角の外と内をつなぐという設計コンセプトを、事業運営にも落とし込んだ。ご多分に漏れず、高齢化・過疎化の進む中山間地域ではあるが、土地のDNAに根ざした交流性を引き出し、何か新しいことをやってみようという起点になることで、地域の商いの循環を活性化させることを目指した。
電通から独立後、出資も伴うフルコミットメントの事業としてはじめて行った事業。2019年いっぱいで永楽商店としての恋する鹿角カンパニーの経営権を地元の事業者に引き渡しました。2020年現在も同社による運営が続いています。

完全新設の道の駅で、立ち上げから初年度は大変苦労しました。運営計画がなされないまま設計建築が進んでおり、内覧してみると冷凍ストッカーの設置場所がないことに気がついたり、地元産品の集荷スペースが設定されていないことに気づいたり。事業計画上、冬期の売上は通年の平均値の3割を覚悟していましたが、2割しか行かなかったり。このような話は枚挙にいとまがありません。パートさんの愚痴も聞きました。濃すぎる人間関係。初年度は色々な種を蒔いて試行錯誤しつつ、2年目はやるべきこととやるべきでないことの見極めをし、徐々に軌道に乗せてゆくことができたかと思います。
物販も、飲食も、施設管理も、イベント運営も、すべてがあるのが道の駅。ほぼすべてを自前で対応したため、多くの経営運営ノウハウを体当たり方式で蓄積することができました。

地域経済の自立モデルを模索している中で、鹿角市の提示した「補助金ゼロでの道の駅運営」というテーゼにチャレンジしてみようと思ってやってみた、というのが本件の動機でした。恋する鹿角カンパニーとしては2年目から黒字化できましたが、道の駅単体の収支は改善したものの2年目もやや赤字でした。
初年度に挨拶回りをする中で「お前のところが儲かったらうちの売上が落ちるだろう」と言われたことがありました。「うちが儲かったら、あんたのところも儲かるはずだ」とは言い返せば良かったのですが、言い返せず。オープン後にはニコニコして「おお、賑わってますね、うちも売れてますよ」とご挨拶いただきました。
おそらく減反政策に端を発しているのですが、地方は補助金に浸かりきっています。その中で「補助金ゼロ」を掲げることの心意気は正しいですが、政策サイドの正しい覚悟も必要です。正しく経営技術を使うことで、自立自走する道の駅経営というテーゼに対して、一定の結果を示すことができたかと思います。あとは、地域を支えるみなさんで頑張っていただければと思っています。

Project Owner
鹿角市(設置者)
恋する鹿角カンパニー(指定管理者)
Agency
− (自主事業)
Role
総合プロデューサー
(恋する鹿角カンパニー代表取締役)
From-To
2018-2019